米国のマーチングバンドと日本のマーチングバンドは選曲も違う—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[9]-(松沢呉一)
「ミリタリー系マーチングバンドと非ミリタリー系マーチングバンド—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[8]」の続きです。
ヒットした曲をすぐさま取り入れる姿勢は非ミリタリー系の傾向
前回書いた「ミリタリー系か非ミリタリー系か」の違いは選曲にも出ます。
ミリタリー系マーチングバンドの極北であるファイティン・テキサス・アギー・バンドはレコードやCDを多数リリースしてきましたが、曲名を見ると、「星条旗よ永遠に」を筆頭に、歴代の愛国歌や軍歌の類が並んでいます。
対して非ミリタリー系であるオハイオ大学マーチング110は、「江南スタイル」やマイケル・ジャクソンを選んでいます。戦いの音楽ではなく、享楽の音楽。ナチス的に言えば退廃音楽。
前々回埋め込んだオハイオ大学マーチング110のコンサートの動画の中で、「おっ、いい曲だな」という曲があって、MCが曲名を言っていたので検索してみました。
この曲。
ギャヴィン・デグロウの「 I Don’t Want To Be」(MVは埋め込みができないので、音だけ)。私は知りませんでしたが、2009年に、えれえヒットした曲なんですね。
「親に決定されたくはない。周りを見て自分はどうあるべきかを考えたくはない。自分は自分でしかない。他の何にでもいたくない」という内容の曲です。こういう個人主義者はとっ捕まえて軍法会議にかけるのがミリタリー系。
これ以外にもこのコンサートの頃にヒットした曲をやっていて、ヒットした曲をすぐさま取り入れる姿勢は非ミリタリー系の傾向(コンサートでは、チームに対する応援歌ではなく、曲を聴かせる姿勢になるため、スタジアムでの選曲と違って来ましょうけど、彼らはスタジアムでも「江南スタイル」をやっていますから、どこでも一緒)。
マーチングバンドの選曲
オハイオ大学マーチング110はわかりやすかったのですが、選曲でそのマーチングバンドの思想みたいなもの読み込むのは案外むずかしい。米国のほとんどのマーチングバンドは、なんという曲をやっているのかわからんのです。
以下を観て、知っている曲があるかどうか確かめてください。
(残り 1865文字/全文: 2900文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ