インフルエンザを名目に反政府活動を封じるイラン政府—コロナ禍で既成事実化した強権的対策が社会を蝕んでいく-(松沢呉一)
「コロナ禍で全体主義者の本性を露わにした人々—個人の自由は全体主義に負けがち[下]」の続きのような内容です。
イランではマッサ・アミニの服喪明けで大荒れ
以下はロシアから出国する観光客の群れではなく、マッサ・アニミの墓を訪れたイランの人々です。
イスラム教では40日が服喪期間で、40日の節目には墓参りに行く習わしだそうです。一昨日26日がマッサ・アミニの死から40日目でした。
政府はこれを予期して、墓参りに行かないようによびかけ、当日、道路を封鎖しましたが、道路封鎖を回避した人たちもいて、また、徒歩で向かう人も多く、数千人がクルディスターン州サケズ市の墓地に集まりました(他の映像を見ると、数万人だと思います)。彼らは口々に、マッサ・アミニの名前や「自由」といった言葉を口にして、いつものデモと同じ様相を呈していました。
道路封鎖された各所で反発する人々と治安部隊が衝突し、治安部隊は催涙弾や実弾を発砲し、一昨日も全国各地で数千人が逮捕されたようです。インターネット規制がさらに強化されたため、なお詳細は不明ですが、10人以上が殺されたとの説も。
また、全国でストライキが発生していて、テヘラン大学などで抗議集会が予定されていたのですが、治安当局は、インフルエンザの予防を名目に各大学を封鎖したため、学生たちが怒り、こちらも荒れたようです。
ん? インフルエンザ?
イラン政府によるインフルエンザの悪用
10月に入って、イラン政府は、インフルエンザのパンデミックに備えた対策をとる旨を公表していました。実際のところどうなのかわからないですが、最初からインフルエンザ対策を治安に利用しようとしたのではなく、純然たる予防策を取ろうとしたようにも見え、WHOもこれを取り上げています。
2022年10月14日付「WHO/NEWS」
このあと、インフルエンザと新型コロナの複合的な流行が懸念されていますから、それに対する特別な対策をとることはおかしくないのですが、それ自体、純然たる医療的対策だったとしても、一昨日、急に大学を封鎖したのは、その悪用でしかない。国民を次々と殺している政府が、インフルエンザに対しては国民の命を守るようなフリをしてんじゃねえって話です。
もちろん、私はこれを批判しますし、批判する資格を失ってません。新型コロナについても対策は過剰であり、インフルエンザとたいして変わらない病気なんだから、その程度のものとして扱えばいいという考え方であり、今もそう思っています。
(残り 956文字/全文: 2120文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ