マーチングバンドはスタジアムとマーチでこんなにも違う—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[7]-(松沢呉一)
「米国最強のマーチングバンド、ファイティン・テキサス・アギー・バンド—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[6]」の続きです。
米国のマーチングバンドの主たる活動の場は「スタジアム」
前回出した京都橘高校吹奏楽部とファイティン・テキサス・アギー・バンドのふたつの映像が、日米のマーチングバンドの違いを鮮やかに見せてます。
軍楽隊から始まったマーチングバンドは、殺し合う場での出番がやがてなくなっていきます。ウクライナでの戦争に軍楽隊が登場したら、すぐさま敵に位置を知られて、ミサイルを撃ち込まれておしまいです。今は戦死者の追悼式典にかつての役割の名残りを見出すくらいになっていて、あとは大統領の就任式典などの公式行事の他、スポーツ競技などでパフォーマンスを披露。
大学や高校のマーチングバンドも、スタジアムでの活動が重要になります。とくに米国で重視されるマーチングバンドの活躍の場はアメフトです。オープニングやハーフタイムでパフォーマンスをします。
米国のスタジアムでの演奏動画はだいたい11分台。アメフトのハーフタイムが12分だからです。この時間にすべてを注ぎ込むのが米国流。
日本のマーチングバンドにもこういう役割がないわけではないですが、弱い。高校野球、大学野球でも、試合の際に駆り出されるのはもっぱら応援団であって、マーチングバンドではありません。
日本の応援団がそうするように、米国のマーチングバンドも、試合中は観客席に陣取っての演奏をやります。この時はしばしば相手チームのマーチングバンドと掛け合いになります。これがあるので、ライバルチームとのバトルが日常化していて、パレードのリハーサル時間でもバトルをやります。戦争のための音楽から脱した今も闘いの日々。
地元のプロチームの試合に呼ばれるようなマーチングバンドは、ほとんど毎週のように出番があります。プロチームじゃなくても、自校のチームの試合がありますし、アメフト以外の競技にも呼ばれましょうから、週に何本もスタジアムでの出番があるはずです。
パレードへの参加もあるにせよ、頻度がまるで違います。なおかつ、プロのスポーツ競技の場に呼ばれる時は金も出るでしょう。個人へのギャラにはならないにしても、マーチングバンドの楽器代、移動費、宿泊代、衣装代になりますから、必然的にこちらに力が入ります。
例外もありましょうけど、米国のマーチングバンドはスタジアム基準です。
✳︎Wikipediaよりファイティン・テキサス・アギー・バンド。完全に兵隊であり、軍隊です。踊る余地なし。笑顔の必要なし。全員、楽器だけじゃなく武器も使えますので、本気のバトルになったら敵はハイマースを撃ち込まれて全滅します。
スタジアムで踊るオハイオ大学マーチング110
スタジアムでは楽器の演奏と規律正しいフォーメーションが何より求められ、細かな動きをしたところで見えないため、ダンスは大きな動きを見せることができるチアガールやダンサーたちが担当します。
しかし、スタジアムのパフォーマンスでも、ダンスをやるマーチングバンドがたまにいます。
以下はオハイオ大学マーチング110(11oはついたりつかなかったりしていますが、110はこの時のメンバー数だそうです)。
「江南スタイル」で拍手喝采。「江南スタイル」の馬乗りダンスを踏まえて、本格的に踊る時には楽器を下に置いてますが、演奏している時もそれなりには踊ってます。
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