松沢呉一のビバノン・ライフ

中国の感染者爆発はゼロコロナからウィズコロナに転換したためではなく、それ以前から始まっていた—またも世界は騙された-(松沢呉一)

なんだか引っかかる中国の動き」の続きです。

 

 

中国の薬不足が日本にまで影響

 

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各社似たような報道をしているので、どれでもいいのですが、とりあえず以下を観てください。

 

 

 

ゼロコロナ対策に反対する抗議行動の拡大に押される形で12月7日に全面的に規制が緩和され、感染者が出てもその周辺が封鎖されることはなくなくなりました。その結果、感染が爆発的に広がり、死者も増大し、著名な元ジャーナリスト2名が立て続けに亡くなったことが公表され、また、元プロサッカー選手である王若吉も死亡(糖尿病を患ってました)。病院は満杯、火葬場も満杯。

あそこまで至っても恐怖のあまり、規制緩和に反対している人が多かった上に、感染者も死者も激増する現実に、中国社会はパニックになり、薬局に人が殺到し、検査キットは品切れ。風邪薬、解熱剤、喉の薬も品切れ。そんなもんで新型コロナを治療できるわけではない(症状を和らげる効果くらいはあるかもしれないですが)。

言うまでもなく、不安のための買い占め行動です。トイレットペーパーの買い占めが中国で起きなかったのは、政府のゼロコロナ対策を信頼していたためだと言うのが正解か。

もう一つ中国特有の事情があって、「オミクロン株は無症状が多い」という定説が中国では通用せず、ほとんどの感染者は、発熱や咳、だるさといった症状が出ていて、「弱毒化が進んで重症化はしにくいが、風邪より重い症状が出る」と言われています。これは政府機関も認めているので、そのようなタイプの亜種が広がっているのかもしれない。

症状が現にでているために薬が欲しい。感染拡大のために薬の需要が急速に高まり、日本にもそれが及んでいます。

 

 

「感染拡大は自由を求めたせい」という論調

 

vivanon_sentence抗議行動はエスカレートして、共産党打倒に至るという見方をする人たちもいましたが、私は「圧倒的多数の人は行動できなくなるのが嫌なだけなので、緩和をすればあっという間に沈静化する」と見てました。私の読みの方が正しかったようです。

上の報道の中で「自由の代償」と言っている人がいます。この言葉は「自由を求めた以上、感染者が増えることまで受け止める」という肯定的な見方を表現している場合と、「自由なんて求めるヤツらのせいでこうなった」として、「こうなったのは抗議をしていた連中のせい」としている場合があって、おそらく後者の意見が強い。

以下は中国のSNSで拡散されたもの。

 

 

男の恋人への女の要求と国民の国への要求とを重ねて、国民のわがままさを笑ったものです。

「なぜ私にかまうの?」「なぜ私を無視するの?」「私がほっといてと言ったら、本当にほっといた」「私の自由を干渉するなとは言ったけど、私の安全の責任を負わなくていいとは言ってない」「あなたは私のことをもう愛していない」

「自由が欲しい」といいながら、自由になると今度は急に政府に「なんとかしろ」と泣きつくってことです。

現実には抗議していた人たちは現状を受けていれているでしょうが、多くの人は「抗議していたヤツらのせいだ」と責任を押し付けているだろうと思います。

御用メディアもそういう論調が多いです。「こうなることがわかっていたので、政府はゼロコロナ対策を続けてきたのだ」と。

 

 

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