松沢呉一のビバノン・ライフ

「クレムリンをドローンで攻撃したのは誰か」の議論が各国で続く—第三の可能性を改めて整理-(松沢呉一)

 

米・戦争研究所はロシアの自作自演説

 

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クレムリンが攻撃されたのは歴史的事件でありますから、ドローン攻撃は誰がやったのかについて、世界各国で専門家から素人までが議論していますが、なおはっきりとしたことはわかりません。

ついにクレムリンにもドローン攻撃—ウクライナ軍かロシアの自作自演か、それとも…」を出したあと、米・戦争研究所が「ロシアの自作自演の可能性が高い」と発表したことを知って、その可能性を軽視していた私は「ゲッ」と思いました。

以下の小谷哲男・明海大学教授の主張は戦争研究所の考えに近い。

 

 

クレムリンに二機のドローンが至るには、何重もの防空システムをかいくぐる必要があって、ほとんど不可能というのが戦争研究所がロシアの自作自演説を支持する最大の根拠です。

これに対してはさまざまな批判が出ていて、高橋杉雄・防衛研究所室長が言うように、中国製ドローンであるムギン5のように低空を飛ぶドローンもあって、いかに厳重でも防空システムをかいくぐることは不可能ではないとのこと。

私はウクライナからモスクワまで飛行するドローンがあるのかどうか疑問があったのですが、距離的にもムギン5だと余裕で可能とのことです。

 

 

自作自演説に対する疑問

 

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「クレムリンは厳重な防空体制のもとにあるロシアでもっとも安全な場所」という評価を覆すことになる自作自演をやるはずがないというのも説得力のある批判かと思います。「ロシアの防空体制はたいしたことがないので、ドローンでロシア領土を攻撃されたらひとたまりもない」とわざわざアピールするわけがないと。もっともな批判であり、むしろこのような攻撃がウクライナから為されたら、懸命に隠してよさそうです。

ロシアがドローンを飛ばしたのはウクライナによるものと断定しながら、「どこから発射したのか」「どういうドローンか」など具体的な根拠はなく、ロシアの言うことは信用できないとの意見もありますが、そんなん、今に始まったことではなくて、いつものことですから、批判としては弱いにせよ、私も言っていたようにメリットよりデメリットの方が大きいという批判は有効かと思います。

小泉悠もロシア政府の動きからして、自作自演の可能性は薄くなったと指摘しています。

 

 

 

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