松沢呉一のビバノン・ライフ

ジョージアに逃げたロシア人と日本がロシア人を受け入れる可能性—国外脱出したロシア人たちの苦渋[18]-(松沢呉一)

ロシア人が近隣諸国に抱く親しみの正体—国外脱出したロシア人たちの苦渋[17]」の続きです。

 

 

ひさびさに「ジョージアに逃げたロシア人」

 

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どういう経緯でいまさらジョージアに逃げたロシア人を取り上げているのかわからないですが、改めてジョージアでのロシア人がどう扱われているのか確認してみましょう。

 

 

冒頭で「なんでロシア国旗を出しているんだよ」と思ったのですが、Zのシールを剥がしている次の動画とともに彼女がまだロシアにいる時にYouTuberとして投稿していた内容なのだと思われます。大胆です。

しかし、これでもまだ亡命が認められない国が多いのだろうと思います。一度は捕まって執行猶予がついているとか、指名手配されているとかしないと認められないのだろうと想像します。認められるんだったら、他の国に移動するでしょう。

この番組のように、ロシア政府を批判し、ウクライナを支持するロシア人たちの視点からすると、「ジョージア人はもっと寛大になれよ」と思ってしまいますが、人口370万人のジョージアに140万人以上のロシア人が流入。帰国した人や他の国に移動した人たちを含めた総数でしょうが、人口の1割だとしても、国民の負担は大きく、不安も大きい。日本で言えば1千万人以上ですから。

現実に家賃を筆頭に物価が高騰し、車で逃げてきた人が多いために道が渋滞し、街中にロシア語を話す人たちが増えてしまって、ジョージア人にとってみると、「いい加減にしろ」と思うのは当然ですし、ロシアが彼らを口実に攻めてくるかもしれないと恐れるのも当然です。

ビザなしで入国できるため、審査なしで入国してくるロシア人の中には、「プーチン支持、ウクライナ侵攻支持、しかし、自分は戦争に行きたくない」という人々が相当数いそうです。この番組ではわからないですが、ロシア人の中にはジュージアを属国扱いして、ジョージア人を小馬鹿にするのもいます。

スパイも送り込んでいるでしょう。食えなくなったそのタイプのロシア人に「金をやるからジュージアに逃げた反政府運動の活動家をピックアップしろ」と誘いかければやるでしょうし、「反ジョージア政府の運動を組織しろ」と言えばやるでしょう。

 

 

外国人の受け入れにおいて同化を前提にすることは当然のこと

 

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それでも「ジョージア人はもっと寛大になれよ」と思ったら、日本がそういったロシア人を受け入れて、ジョージアの負担を軽減させるべきです。

今までさんざん書いてきたように、日本が受け入れるとしたら、まずは学生です。日本に来ているロシア人留学生は少ないので、千人や二千人は来ても大丈夫かと思います。学生の場合は日本語を勉強しますから、いつまでも日本語を話せないままになることはない。いろんな大学に分散すれば、ロシア人コミュニティも大きくならない。

ロシアから頭脳流出が起きているという話がありますが、日本にとって有益な人材をゲットできます。ウィンウィンです。6月にロシア人留学生が1人亡くなったことでもありますし。

前々から書こうと思っていたことをこの機会に書いておきます。私のような考え方は同化政策だと批判する人がいるでしょうが、大きな間違いです。国内の少数民族に対して同化を求めることや侵略した先で同化を求めることと、移入者に同化を求めることはまったく別です。

 

 

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