AC/DC『LIVE』 最高のロック・バンドとはレッド・ツェペリンです。しかし、最高で最強のロック・バンドとはAC/DCです
最高のロック・バンドとはレッド・ツェペリンです。しかし、最高で最強のロック・バンドとはAC/DCです。
僕が一番好きなバンドはザ・フーですが、ギターのピート・タウンゼントが「ツェペリンのことは憎んでいるよ、色んなことを俺たちよりも全部ビッグにやりやがった」と言っているように、ツェッペリンの方が上なんでしょう。
ピートが何を怒っているかというと、ツェペリンがロックのビジネスを根底から変えたからです。ビートルズがアイドルというマーケットをカウンター・カルチャーに変えたとはいえ、ツェッペリンが登場するまで、ロック・バンドって「ユース革命だ」とか叫んでても、プロモーター(日本で言う興業師さんですね)の道具だったわけです。「ギャラはなんぼだからね」と言われて、その通りのギャラをもらったり、ライブ終わって楽屋で「ギャラは払えない」とピストルで脅されたりしていたのです。
レッド・ツェッペリンは「いや、それは違うだろ、お前らは俺たちがいるから稼げてるんだろ。俺たちが利益の90%をもらう、お前らは10%で充分だろ。だって何もしてないじゃん。コンサートの設置!?、ケータリング!?、そんなのお金さえ払えば他の奴でもやれる仕事だ。特別なことはお前ら何もしてねぇ。“宣伝やってる”だって、俺たちのライブは新聞に1ページの広告を出せば、それでソールド・アウトになってるじゃん。お前らの仕事は新聞社に電話して、1ページの広告押えて、広告料払っているだけじゃん、お前らのお金なんて1割でも多いくらいだ」と、これがロック史を変えたわけです。
ツェッペリンがもっと凄かったのは前座もなしでコンサートをやれるようになってたんですね。彼らが出て2時間みっちりライブをやっても誰も退屈しなかったんです。前座とかもいらない、彼らは本当にコンサートの利益を全部総取りするバンドだったのです。そんなバンドはいなかった。例外はザ・フーでロック・オペラ『トミー』が成功して、彼らのセットは『トミー』の再現を組み込んで一つのバンドだけでツアーを回れるようになっていたのですが、『トミー』の次のロック・オペラを考えないと一つのバンドで回っていくのは辛くなるのは見えていたから、ピートはロック・オペラに当時流行っていたハプニング(今で言うとフラッシュモブみたいな奴ですか、観客巻き込み型のショー)をくっ付けたショーを考えていたのですが、他のメンバー、スタッフなどはピートが何をやりたいのか全く分からず暗礁に乗り上げてしまったのです。
因みに無料で路上でハプニングをやっていた人たちの周りで、やっている人たちの許可なく、見ている人たちからお金を集めていたのが、ロック・プロモーターの元祖ビル・グラハムです。
これが今、僕たちが体験してるロックというものを元気にしたわけです。本当の産業というものにしたのです。マドンナ、U2もストーンズも全部この理屈で動いているわけです。
この次の進化に何があったかというと、日本でも会社を立ち上げたライブ・ネイションなんです。ライブ・ネイションが何をやったかというと、「うちは世界中のライブをどこでもやっても同じステージでやれるようにするよ」という確約をアーティストに証明したのです。
それまでは世界中いろいろなプロモーターがいて、アメリカやイギリスでやれるのと同じライブをこなすことはなかなか困難だったのです。イタリアに行ったら「消防法の問題で、ステージの横幅5m短くしなあかんねん」なんてやってたら、アーティストはステージから落下するリスクが増えるわけです。マドンナやボノは安心してライブが出来ないわけです。そんなアーティストのリスクをなくすよ、世界中どこいっても同じステージで立たせてあげるよと確約したのがライブ・ネイションなのです。
話が興業の話になってしまいました、本当はツアー、フェスが投機の対象となって、フェスの世界を変えていたという話もしたいんですが、それはまた今度にしてツェッペリンに話を戻します。彼らはロックンロール・ビジネスを根底から変えたんですが、そんなことをやったから大変なことになったんです。その怖さはレッド・ツェッペリンの映画『レッド・ツェッペリン狂熱のライブ』の最後に描かれています。
ホテルの金庫に預けたコンサートの売り上げ金が全部消えてしまったのです。FBIが捜査に乗り出したですけど、結局この事件の真相は闇に消えたままです。そりゃ音楽業界のプロモーターなんて元々はマフィアのような人も多いです。そんな人らに「ギャラは利益の10%でいいだろう」とやったら、こんな不思議なことも起こりますよ。でも業界は気付いたんです、これでもビジネスやっていけるんだ、お前ら今まで取り過ぎだったろと。
レッド・ツェッペリンの犠牲によってロック・ビジネスは何歩も前進したのです。この頃のツェッペリンに、不幸が続いていたのはバンドのメンバーを探す時に悪魔と取引きしたからと言われてましたが、このお金が紛失した事件はマフィアの怒りを買ったからだけなのです。
そんなレッド・ツェッペリンを超える最強のロック・バンドがAC/DCだと僕は思っています。
「アンガス、アンガス、アンガス、アンガス」と叫ばれるギターのアンガス・ヤングだと思うかもしれませんが、違うんです。最強のギターとは兄のマルコム・ヤングなのです。
ライブ中に酸素ボンベを吸わないといけないくらい動き回るアンガスの後ろで、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルには似つかわしくないグレッチのギターを弾くマルコム、しかもそのプレイはフォーク・ギターのようなオープン・コードなんです。A、D、Eの3つのオープン・コードを駆使して、ツェッペリンのジミー・ペイジも真っ青なヘヴィでかっこいいリフを作りまくっているのです。
そんなマルコム・ヤングも認知症を患わせて、亡くなってしまいました。
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