久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ニール・ヤング 『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』 –この曲はSFやったんかと、びっくりです。しかし、この歌が作られて53年経ちますが、UFOは現れません

 

 

ニール・ヤングの「ライク・ア・ハリケーン」のリード・ギターは永遠に続くかのようで本当にとべます、と書きました。ニール・ヤングの代表曲「ハート・オブ・ゴールド」はボブ・ディランもジェラスしたヒッピー世代の終焉を歌った歌と書きました。

でも一番最強の曲と言えば『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』に入っている「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」だと思うのです。前に一度、解説書いているんですが、今回この歌詞の意味完全に解読出来ました。めっちゃうれしいです。人間って成長するもんですね。このWEBマガジンやっていて、よかったとつくづく思いました。

 

 

 

「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」、実にシンプルだけど、美しいピアノ・バッキングから始まる曲です。子供の時からめっちゃとんだはるなと思ってきいてました。

たぶん、RCサクセションの『シングルマン』に入っている「ヒッピーに捧ぐ」という曲は「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」をやろうとしたんだろうなと思います。本当に友達が死んだ事実はあったのかもしれないですけど。

 

 

「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」も2番で友達が死んだことが歌われます。焼け焦げた地下室で、満月のように瞳孔がひらいた目でいると。

“僕の目の中に満月があるんだ”という表現素晴らしいですね。瞳孔が開いているのを、僕の目の中に満月があるって、分かるわ。とんでる時、鏡見たら、瞳孔開いていたら、俺とんでいるなってあがります。

そうしたら、バンドの音が聴こえるんです。あれ、不思議だな、俺とんでいるのかなとニール・ヤングは歌うんですけど、ここの歌い方、最高すぎます。もう40年以上聴いてますけど、いまだに、なんやろ、解放されたような気持ちになります。

でも、不思議だなとニール・ヤングは思っているので、たぶんその演奏しているバンドの子たちは、焼けこげた地下室で死んでいるんだと思います。

ニール・ヤングはこう歌うんです。友達が言っていたことを、嘘だと思いたかったと歌うのです。ここ泣ける所ですよね。今も泣けます。

「ヒッピーに捧ぐ」だと検視官と市役所は君が死んだなんて言うのさ、明日また額屋で会おう、新しいギターを見せてあげる。という所です。

検視官と市役所は君が死んだなんていうのさって、歌っているので、作り話なんだなと思うのです。僕もそういう現場に立ち会ったことがありますが、警察官もお医者さんも「お亡くなりになりました」とは言わなかったです。「身内の方に連絡してください」と言うだけでした。

亡くなった人の友達が「両親になんて言ったらいいんですか」ってきいたら、「親御さんに息子が薬で亡くなったとお前言えるのか」と、刑事さんに怒鳴られていました。こうやって心不全として処理されていくんだなと思いました。

クラブで働いているとこういう悲しいこともありました。

「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」が不思議なのは、3番で空飛ぶ円盤が出てくるのです。

ずうっと何で、と思っていたのですが、リンダ・ロンシュタットとエミリー・ハリスはこの歌がどういうことを歌っているのかまったく分からずニール・ヤングに電話したそうです。

美女二人がこのキラキラ輝く曲を聴いて、どんなことを歌っているのか、全く分からず、二人相談して、ニールとは友達だし、電話してみようかって、話あっているのを想像しただけで、なんか気分がよくなります。二人絶対、ワイン飲みながらとマリファナ吸ってたりしますよね。

でもニールの答えは「分かんない」だったそうです。

近年、自伝で“この曲は環境問題を歌っている”と書いてますが、笑ってしまいますよね。

三部構成なんです。一番は中世の時代の夢を見たって、歌っています。鎧を着た騎士が出てて、女王がどうとか言って、その後ろでは農民たちが太鼓を叩き、オチは母なる自然が1970年代より去っていく

たしかに環境なんとかせいということですね。ナインティン・セブンティーンという完璧なメロはそういうことだったんですね。

でも、3番の円盤が出てくるのはなんやねんと、選ばれし者って歌っているから、滅びゆく地球に円盤が現れて、選ばれたものだけが円盤に乗って、彼らの星に連れていってもらえるというオチなのでしょう。それが最後のオチの銀の種子は新しい家にということなのでしょう。

じゃ2番の焼けこげた地下室というのは、原爆で破壊されたということなのでしょう。辻褄があいました。SFだったんですね。

 

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tags: Neil Young RCサクセション

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