松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシアでもウクライナでも兵士の妻たちが立ち上がり、ロシアでもウクライナでも国外脱出が相次ぐ—両国ともに疲弊が進む-(松沢呉一)

 

まだ続くロシア、カザフスタンの洪水

 

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中国に続いて、今はカナダ、米国で山火事が猛威を奮っています。本年の山火事被害は昨年を超える見込みで、予定通り、年々地球は激しく燃えていきます。

また、インドネシアで火山が噴火し、四国では地震、シナイ半島では歴史的大洪水と、災害を追っているだけでも1日が終わりますが、こんな状態でもなおロシアとウクライナの戦争は終わらず、これに加えてイスラエルをめぐる戦争は拡大しそうです。イスラエルについては触れない方針なので、引き続き無視するとして、私の中ではまだロシアやカザフスタンの洪水の興味が続いています。

 

 

これはウクライナ・メディアですが、他国メディアでも、同じような報道をしています。

他の報道を合わせて、ここまででわかったこと。

一部地域では水位が下がってますが、ウラル山脈から流れ込む水量が減らないため、水位が下がらないままの地域が多い上に、洪水のエリアは拡大しつつあります。具体名が出ている場所が複数ありますが、ロシアとカザフスタン以外では、キルギスのジャララバード州が危ないようです。カザフスタンを超えた場所。

 

 

ジャララバード州は赤い線で囲まれたところです。この地図では分からないですが、ウラル山脈(この地図の北西)からの川が流れ込んでいます。ただでさえ水位が上がっている上に、降雨が続いているらしい。すぐ隣が「ビバノン」で話題ウズベキスタンですが、川を見る限り、今回の洪水による被害はなさそうですし、ウズベキスタン人のコンビニ店員も「大丈夫」と言ってました。

今回の洪水は、昨年の大雪から始まっていて、例年以上にウラル山脈の積雪が多く、雪解け水がそれに伴って増加することは予知できたはず。なのに、州政府は何の対策も取らず、警告さえせず(州政府は警報を出したと言ってますが、嘘くさい)、救援も不十分で、やむなく住民の有志たちが救援活動や食糧の配布をやっています。

カザフスタンの方が政府の救援が行き届いているように見えます。

また、輸出用に木材を無計画に切り出したため、森林の保水力が低下したことが洪水を招いたとの説もあります。つまりは人災の側面も無視できず、これらのことで、いよいよ住民は怒りを高めています。

プーチンはヒトラー同様に、「ダメなのは州政府であり、プーチン様が知ったら決して許さない」と国民が発想するように仕向けていますが、今回ばかりは日に日にプーチンへの批判が高まっています。プーチンは一度も現地に行っておらず、おそらく住民の罵倒を恐れているのでしょう。

 

 

ロシアでもウクライナでも、兵士の妻たちの抵抗

 

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上の動画の中に、「事前に洪水になると訴えていたのに無視された」と訴えている女性がいますが、「夫は戦争に行っている」と言ってます。そりゃ、戦争をやっている場合ではない」と思いますよ。私も思います。

ロシア国内では、ナワルニーの遺志を引き継ぐ人々が闘い続けてますし、兵士の妻たちのグループ「プーチ・ダモイ」の活動は拡大しています。当局はチェチェン戦争の際、「ロシア兵士の母の委員会連合」が反戦運動を主導したことを踏まえて、プーチ・ダモイを警戒し、取材を封じて、拡大するのを防いでいます。突発な街宣活動もやっていて、強行に解散させられることもありますが、未だ逮捕者は出てません。彼女らは戦争に反対しているわけではありませんので。

なお、プーチ・ダモイは、telegramでのタイトルで、путьは「道」、домойは「家」で、合わせて「家路」「帰路」の意味。путьは「プーチ」ですが、путь домойと続けた場合は「プッ・ダモイ」と縮まります。しかし、「プーチ・ダモイ」という表記が定着しているので、ここでもそれに倣います。

 

 

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